「ただし同じ記号を二度用いてはならない」とは

数学雑学

ただし同じ記号を二度用いてはならない

問題 それぞれの空欄に最も適当なものを次の群から選びなさい。

入試などではこんな問題をよく見かけると思います。そしてこのような問題のうち、空欄の数以上に選択肢が用意されている問題では、

ただし同じ記号を二度用いてはならない。

という制約がされていることがあります。これはいったい何のためなのでしょうか。ひねくれずに考えるなら、「答えやすくするため」なのでしょう。確かにこのような制約は時にヒントとなりえます。 しかしわざわざ禁止しているのだから、「あてずっぽうでは点数を稼ぎにくくするため」なのではないかという気がしてくるものです。もしそうならばその効果はどれほどなのでしょうか。実際に調べてみましょう。 以下では空欄をa個、選択肢をb個、それぞれの空欄を1点の問題(満点がa点)とします。

空欄と選択肢が同じだけある場合

問題を解けずとも点数を取るための最も単純な戦略の一つは、「すべての空欄に同じ記号をいれて1点を確保する」でしょう。当然この場合、期待値は1です。しかしこの場合、それができなくなっています。なので先ほどの予想が正しければ、あてずっぽうの場合の期待値は1未満であると考えられます。 実際に制約を守って回答した場合の期待値を計算してみましょう。例として1つ目の空欄に関して考えてみると、 \[ すべての回答:a!通り \\ 1つ目が正解である回答:(a-1)!通り \] なので、これをa個の空欄に対して考えると期待値は \[ \frac{(a-1)!}{a!}\times a=\frac{a!}{a!}=1 \] !? 予想外に期待値は「すべての空欄に同じ記号をいれて0点を回避」の場合と等しいようです。期待値が同じでもこの場合ではすべて外れれば0点、まぐれですべて当たればa点なので、より運が試されるようになったということでしょうか。

空欄より選択肢が多い場合

空欄より選択肢が多い場合はもう少し複雑なので、より点が取りづらくなるような気がします。この場合では先ほどの「1点確保」ができません。この手法の期待値は、その選択肢がいずれかの空欄に含まれる確率に等しいので \[ \frac{{}_{b-1} C_{a-1}}{{}_b C_{a}}=\frac{(b-1)!}{(a-1)!(b-a)!} \frac{a!(b-a)!}{b!}=\frac{a}{b} \] です。 次に、制約の中での期待値を求めるために、先ほどと同じように計算してみましょう。 \[ すべての回答:{}_b P_a通り \\ 1つ目が正解である回答:{}_{b-1} P_{a-1}通り \] おや…?このことからa個の空欄での総得点の期待値は \[ \frac{{}_{b-1} P_{a-1}}{{}_b P_a}\times a=\frac{(b-1)!}{(b-a)!}\frac{(b-a)!}{b!}\times a=\frac{a}{b} \] 結局同じでしたね…

結論

今回の検証で、この制約は紛れもなくヒントなのであるとわかりました。今後はこの制約に感謝しながら問題を解きたいと思います。

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