「AMD反撃!シェアを犯されるIntel」

鈴木

どうも、二回目ですが中二の鈴木です。それだけですが...

ここ最近CPU市場はCoffee lakeやZen+に沸いていますね。今後もIntelの8コアや7nm Zenが楽しみですね。ここでは、以前のIntelのSandy Bridgeベースのプロセッサや、AMDのBulldozerベースのプロセッサとは違うZenベースコアの仕組みについて解説します。

Zenアーキテクチャは何が違うのか

そもそもZenとは、AMDがCore iでIntelにシェアを奪われる中2012年に開発が始まったアーキテクチャだ。Zenの開発にはかの有名な天才開発者、ジム・ケラーが関わっており、AMDにとってはBulldozer以来のアーキテクチャの更新となった。ZenベースのCPUは競合するCore i系のプロセッサより多コア、低価格なことが一般的に言われている。まずもってそれはどうしてなのか、という話である。

回路構成の効率化

ZenアーキテクチャはIntelの競合する価格帯の製品よりダイサイズが小さい。半導体を製造する上でダイサイズは非常に重要で、歩留まりにも大きく関わってくるのだから小さければ小さいほど良いのだ。

「ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情」では、「そもそも昨今では、14nmプロセスと言いつつも、実際には14nmの寸法になっている部分は1つもない。その代わりにFin Pitch(プレナー型トランジスタの場合はTransistor Pitchなどとも呼ぶ)とCPPを使ってプロセスの大きさを判断することが普通だ。

これに関しては以下の経験則(ASML Formula:ASML の法則)がある。

\[ ノードサイズ = 0.14 × ({CPHP} × {MMHP})^{0.67} \]

CPHPはCPPの半分、MMHPはFinPitchの半分をそれぞれ示す値で、上の数字を使うとRyzen(GlobalFoundriesの14LPP)は13.70nm、Skylake(インテルの 14nm)は11.66nm相当になる。^1」と分析している。

プロセスの微細化という面ではIntelの方が攻めた構成を採用しており、AMDの方が微細化のみで見ればIntelよりダイサイズが大きくなるはずである。理由はどういうことか、それは、アーキテクチャの更新で不要な回路を設計段階で省き(Intelのメインストリーム用途プロセッサではハイエンドデスクトップ用途やサーバー用途のCPUで必要な回路を無効化して居る場合が多い)、同じ回路でもダイサイズを小さくすることを成功させているのだ。こうした効率化で低価格化を実現しているのだと推測する。Zenアーキテクチャの欠点として、コア間レイテンシが挙げられるが、実測値でそこまで処理速度に悪影響を与えているのではないとされている。また、シングルコア性能の低さも挙げられるがそれは今後のアーキテクチャの改良によって改善されていくことだろう。実際、Ryzen1000シリーズより2000シリーズでは微増とはいえシングルコア性能が改善している。Zen2にも期待だ。個人的にはこのBulldozerの失敗を生かしコンピューターでの開発に頼ることなく、人の手で設計したのも大きいと感じている。実際、Bulldozerはアーキテクチャとしての出来上がりは微妙な物だった。また、近年のアーキテクチャの微細化、効率化でダイサイズは組み込み用途で利用されるアーキテクチャの大きさに近づいている。微細化で製造コストが上がったのも一つ理由だが、わざわざ開発リソースを割き組み込み用とのアーキテクチャを開発するより、メインストリーム用途のアーキテクチャをそのまま組み込み用途にも利用できた方が得策と判断したのだろう。Zenアーキテクチャの消費電力を考えれば十分可能な話だ。

Zen発表を受けてからのIntelの対応

一方で、Ryzenで反撃されたIntelも黙ってみているわけではない。元々Ryzen 1000シリーズ(Summit Ridgeと呼ばれる)が出るまではハイエンドデスクトップ用途は Core i7 68xx,69xx(Broadwell-Eと呼ばれる)で対応していたのが、Ryzen 7 1800Xは Core i7 6900Kレベルと宣伝されてしまったが為にいくらかシェアをAMDに奪われてしまった。実際、IntelはAMDがRyzenの販売前に製品のレベルが低いと自作でも、メーカーでも採用する例が減ってしまったが為にIntelのシェアが増え、Intelの独占状態が続きIntelも価格をつり上げていた状態があり、AMD はうまいことその点を突いたのだ。筆者も自作機を組む予定で最初はCore i7 6850Kを使う予定で居たのがRyzen発表でRyzen 7 1800Xで組むことにしたのだ。1年半経った今ではCoffee lakeやPinnacle Ridgeといったより優れた製品が市場に送り出されているが、当時としたらたいそう驚いた物であったことを記憶している。並列処理については依然強いので例えばゲーム 2 つ、ブラウザ、動画再生なんてことも楽々出来ている。Intelは対抗製品としてSky lake-XやKaby lake-Xを発表し、それがIntel特有の高い消費電力と、何しろ今まで消費者を舐めきっていたのかと思わせるほどのプライスダウンだった。結果。Intelと AMDの価格競争構図が生まれRyzenを買わないユーザーでも恩恵を受けたのは大きいと感じている。今後もこの競争には注目できる。

今後のプロセス微細化の展望

話が変わるが、今度はプロセスルールの微細化の話だ。現在半導体メーカー各社はプロセスの微細化を続けており、現在は16nm(NVIDIA)、14nm(Intel)、12nm(AMD)程度まで微細化が進んでいる。この微細化競争の背景にあるのは「ムーアの法則」と呼ばれる経験則が根底にある。(よくムーアの法則は物理法則と誤解されることがあるが、ムーアの法則は集積回路上の部品辺りのコストが最小になるような回路の複雑さを定義した経験則に基づいた将来予測であり、誤解してはならない)しかし今日「ムーアの法則は終わった」と言われることがあるが、それはどういうことなのだろうか。

これまでのIntelの微細化

Intelは元々ムーアの法則に基づき、Broadwellで22nmから14nmへ微細化させ、Sky lakeでそれを最適化した回路を構成し、Cannon lakeで10nmに微細化し、Ice lakeで最適化、Tiger lakeで...俗に言うIntel Tick-Tockである。

10nmで製造された製品は果たして発表されるのか

Sky lakeまでは何とかIntel Tick-Tockを維持させてきた(厳密に言えばBroadwellもかなりずれ込んで一回Haswell-Refreshを挟んでいる)が、Sky lakeの先、Cannon lake、もとい10nmの開発が遅れたことや 14nm の設備投資の回収が進んでいないことから 2016(2017)年の新製品はKaby lakeで 14nm+として出荷されることになった。おまたせ。と Intel が出してきた次期プロセッサは...「14nm++しか無かったけど...良いかな?」そう、本命の10nmCannon lakeではなく Coffee lakeだった。選ばれたのは、14nm++でした。(実際10nmよりも 14nm++の方が、性能が良くなるという話もあったことにはあったのだが...Intelの発表では、かなり大きな壁に当たったこともあり10nmは当分延期になるようだ。また、Coffee lakeはRyzenへの対抗製品の意味合いもあり、プロセスの微細化よりも性能向上を優先させメインストリーム系プロセッサでの6コア化を実現させた。そして、現在に至るのだ。

これまでのAMDの微細化

対してAMDは、Bulldozer以来停滞していたアーキテクチャ開発を新規で行い、Intelに少し遅れをとったものの14nm化を果たした。14nm化で低消費電力を実現、また、ダイサイズの最適化を行った。AMDの資料だと、2017年発表のZenで14nm、2018年発表のZen+で12nm、その後2020年までにZen2で7nm、Zen3で7nm+となっている。要は10nmはスキップし、7nmまで直接行ってしまうのだ。どうやらCPUではなくGPUでVega 7nmのサンプル品の製造が出来ているようなので、そっちの心配は要らないと思われる。

プロセス微細化は今後も最善の手段となり得るのか

そもそも、半導体の微細化は回路の複雑さを向上させ、なおかつ製造コストを下げるための最善の手段として今日まで行われてきたことであり、他の手法が見つかれば微細化に拘る必要は無い。半導体メモリは3D-NANDという手法が考案され微細化競争は下火になっている。ムーアの法則を維持させるために(ムーアの法則を維持するのが目的ではないが)、各社は様々な技術を投入し微細化、もとい回路の複雑さを進めてきた。今まで何度も「ムーアの法則は終わった」と言われ続けながら...

  1. ^1「ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 ― 第398回Ryzenが消費電力を削減できた仕組み」
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