バーゼル級数とは
\[\sum_{k=1}^{\infty}\frac{1}{k^2}=1+\frac{1}{4}+\frac{1}{9}+\cdots=\frac{\pi^2}{6}\] これがバーゼル級数です。今回はこの級数を利用して円周率を計算していこうと思います。また、プログラミングに疎い人でも楽しめるように表現を曖昧にしていたり多少ずれていることがあります。
Pythonでの計算
今回はプログラミング言語にPythonという言語を選択しました。
Pythonは文法が比較的簡単でわかりやすく、優れたツールの豊富さが魅力の言語です(もちろん文法が比較的に簡単といえどもしっかり理解しようと思うととても時間がかかります)。
デメリットとしては、仕様上比較的実行に時間が掛かり、用途によっては向かないことなどが挙げられます。
Pythonの実行環境
Python 3.8.2 64bit
ソースコード
方法としては左辺を計算しそれを6倍して√を取るのですが、\(\frac{1}{k^2}\)を\(k = 1\)から無限に足し続けることは不可能なので、今回は\(k = 100, 000, 000\)まで足し続けたいと思います。
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実行結果
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これだけではどれだけ正確に計算できているのか分かりづらいので、合っている桁に色を付けてみたいと思います。
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実行結果2
小数点以下7桁まで合っているのがわかります。
バーゼル級数の証明
ここからは先程のバーゼル級数の証明をしていくのですが、正直このあたりはネット等で情報が山ほどあるのでそちらを見ていただいたほうがわかりやすいと思います(そもそもこの部誌の証明はネットで調べたものとほぼ変わりませんし)。
バーゼル級数が収束することの証明
\( \begin{align*} 1+\frac{1}{2^2}+\frac{1}{3^2}+\cdots+\frac{1}{n^2} &< 1+\frac{1}{1\cdot2}+\frac{1}{2\cdot3}+\cdots+\frac{1}{(n-1)n}\\&=1+(1-\frac{1}{2})+(\frac{1}{2}-\frac{1}{3})+\cdots+(\frac{1}{n-1}-\frac{1}{n})\\&=2-\frac{1}{n}\end{align*}\\よりこの級数は2以下に収束する \)
\(0\le x \le \frac{\pi}{2}\)において\(\sin{x} ≤ x ≤ \tan{x}\)となることの証明
\( 図において三角形ABC < 扇型OAB < 三角形OBCが成り立つ\\すなわち\frac{1}{2}\sin{x}<\frac{1}{2}x<\frac{1}{2}\tan{x}\\よって\sin{x}< x < \tan{x}\\x=0のとき\sin{x}=0,\tan{x}=0\\x=\frac{\pi}{2}のとき\sin{x}=1である\\よって命題は示された \)
ド・モアブルの定理の証明
\( (\cos{\theta}+i\sin{\theta})^n=\cos{n\theta}+i\sin{n\theta}を示す\\n=1のときは自明である\\n=kのとき成り立つと仮定すると\\ \begin{align*}(\cos{\theta}+i\sin{\theta})^{k+1}&=(\cos{\theta}+i\sin{\theta})^k(\cos{\theta}+i\sin{\theta})\\&=(\cos{k\theta}+i\sin{k\theta})(\cos{\theta}+i\sin{\theta})\\&=(\cos{k\theta}\cos{\theta}-\sin{k\theta}\sin{\theta})+i(\sin{k\theta}\cos{\theta}+\cos{k\theta}\sin{\theta})\\&(加法定理より)\\&=\cos{(k+1)}\theta+i\sin{(k+1)}\theta\end{align*}\\であるからn=kが成り立てばn=k+1でもなりたつ\\よって示された \)
バーゼル級数の証明
\( k=1,2,\cdots,nに対し\theta_k=\frac{k\pi}{2n+1}とする\\すると0\le\theta_k\le\frac{\pi}{2}より\sin{\theta_k}\le\theta_k\le\tan{\theta_k}となる\\各辺の逆数をとって二乗すると\\\frac{1}{\tan^2{\theta_k}}\le\frac{(2n+1)^2}{k^2\pi^2}\le\frac{1}{\sin^2{\theta_k}}\\これをk=1からnまで足し合わせる\\\frac{\pi^2}{(2+\frac{1}{n})^2n^2}\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{\tan^2{\theta_k}}\le\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{k^2}\le{\frac{\pi^2}{(2+\frac{1}{n})^2}}(\frac{1}{n}+\frac{1}{n^2}\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{tan^2\theta_k})\cdots(1)\\S_n=\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{\tan^2\theta_k}とする\\\sin{(2n+1)}\theta_k=0より\\z=(\cos{\theta_k+i\sin{\theta_k}})^{2n+1}の虚部は0であり\\また、\sin{\theta_k}\neq0であるからzを\sin^{2n+1}\theta_kで割ると\\z'={(\frac{1}{\tan{\theta_k}}+i)}^{2n+1}の虚部は0である このz'の虚部は\frac{1}{\tan^2{\theta_k}}のn次多項式とみなせる\\このn次多項式をf(x)=a_{n}x^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_{0}=0とすると\\ k=1,2,\cdots,nに対してf(\frac{1}{\tan^2{\theta_k}})=0である\\n次方程式の解と係数の関係よりS_{n}=-\frac{a_{n-1}}{a_n}\\二項定理を用いてa_n=2n+1,a_{n-1}=-\frac{(2n+1)(2n)(2n-1)}{6}であるから\\S_n=\frac{n(2n-1)}{3}\\よって\lim_{n \to \infty}\frac{S_n}{n^2}=\frac{2}{3}であるから(1)式においてはさみうちの原理より\\\sum_{k=1}^n\frac{1}{k^2}=\frac{\pi^2}{2^2}\cdot\frac{2}{3}=\frac{\pi^2}{6} \)