パラメトリックスピーカーを作った

高二 部員

初めに

こんにちは。高二の平部員です。
この部誌も私で最後です。ここではパラメトリックスピーカーの製作記のようなものを書いていきます。

パラメトリック スピーカーとは

簡単に言うと、超音波を使って指向性1の鋭い音を鳴らすスピーカーのことです。
一般的なスピーカは指向性が弱く、横からも、後ろからでも音が聞こえるのですが、パラメトリックスピーカは正面からしか音が聞こえないという性質があります。

作り方

今回は以下のサイトを参考に制作しました。

スピーカー部分にあたる超音波トランスデューサは超音波距離センサのものを使いました。集中力のいる単純作業なので、基板から取り外す作業ものすごく疲れました。

仕組み

ざっくり説明すると下の図のようになります。

flowchart LR
JACK(イヤホンジャック)-->|音声信号| NE555[["NE555で
FM変調"]]
NE555--> InvertingAmplifierA{反転増幅}
NE555--> InvertingAmplifierB{反転増幅}
InvertingAmplifierB--> InvertingAmplifierC{反転増幅}
InvertingAmplifierA-->|反転|FullBridgeCircuit[[フルブリッジ回路]]
InvertingAmplifierC-->|順転|FullBridgeCircuit
FullBridgeCircuit-->UltraSoundTransducer[(超音波トランデューサ x35)]
FullBridgeCircuit-->UltraSoundTransducer
UltraSoundTransducer-->|???|EAR((音))

上の図にあるフルブリッジ回路というのは、Hブリッジ回路とも呼ばれ、主にモーターの回転方向や回転の速さを制御するのに使れる回路です。今回は、大量の超音波トランデューサを制御するのに使っています。

回路の解説はできるのですが、FM変調された超音波からどのようにして音が聞こえるのかはよくわかりませんでした。

wikipediaによると、約110dB以上の音圧の超音波を流すことで、空気の粘性から生じる「非線形特性」により可聴音が出ているようです2
ただ、wikipediaで解説されているのはAM変調の場合であり、今回のFM変調のスピーカーでも同じ仕組みなのかどうかは謎です。

もう少し分かりやすくて踏み込んだ説明をできる方はどうか私に教えてください。

安全面について

先ほど、約110dB以上の超音波を流すと紹介しました。
今回使用した超音波センサのデーターシートには音圧についての記載は全くありませんでしたし、超音波の音圧をどのようにして測定するのかもわかりません。しかし、他の超音波トランデューサのデータシートを比較してみると、今回の物も115dB程度の音圧がでているものと推測できます。
ここで、WHOが出している"Hearing loss due to recreational exposure to loud sounds A review"3(娯楽目的で大きな音量に曝されることによる難聴 レビュー)を見てみると、下の表がありました。

Daily permissible noise level exposure(1日の許容騒音レベル暴露){width=500px}

ということで、一日あたり28 秒までなら使えますね。

冗談は置いといて、人間が聞くことのできる音域、つまり可聴域は20Hz〜20kHz程度だといわれています。一方、今回のパラメトリックスピーカーから発されている超音波は平均周波数は40kHzです。つまり、上の表はヒトの可聴域の話なので、40kHzの超音波は想定していないと思われます。また、星貴之氏の"超音波曝露に関する再考"4によると、

本稿では,強力超音波が日常生活に浸透しつつある状況を背景として,超音波曝露について再検討を行った。これらの技術が主に40kHz周辺の高い周波数帯域を扱っていることを指摘した。文献調査により,その場合の暫定許容値として140dBを提案した。

とあるので、ある程度離れて使う分には特に問題ないと思います。
ただ、違和感を覚えた時には、使うのを中断するに越したことはないでしょう。

出来栄え

これを書いている時点では、正直言って微妙という感じです。
低音域を流そうとするとノイズが大きくなりますし、それほど遠くまで音は届きませんでした。ただ、当然と言えば当然ですが、電源圧や変調度合い言の大きさで音量等が変化することがわかっているので、文化祭での展示までに改善できるといいです。

終わりに

今回、FM変調方式のパラメトリックスピーカーを作ってみて、AM変調方式やパラメトリックアレイなど、他のタイプのものも作ってみたいと思いました。一般に流通しているのはAM変調方式のようなので、もしかするとそちらの方が性能が良いのかもしれません。 最後に、私は今年度の文化祭のホームページの制作も担当しました。良かったらついでに見ていってください。

では、また。


  1. 指向性 : 特定の方向への、感度やエネルギー(今回の場合は音の大きさ)が強いこと。 ↩︎

  2. 参考 : パラメトリック・スピーカー - Wikipedia ↩︎

  3. 引用 : WHO, “Hearing loss due to recreational exposure to loud sounds A review”, 8p ↩︎

  4. 引用 : 星 貴之 (2022), 「超音波曝露に関する再考」,『日本音響学会誌』, 78 巻 9 号 p. 508-513 https://doi.org/10.20697/jasj.78.9_508 ↩︎

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