はじめに
執筆の意図
私は気になってしまいました。日本で最も遠い場所はどこかと。距離だけでいえば北海道最北端の宗谷岬などが思いつくかもしれませんが、そこは飛行機を利用すれば4時間程度でつくことができるんです。これは日本で最も遠い場所ということはできませんね。この部誌では実質的に最も遠い場所を探していきたいと思います。
レギュレーション
移動手段はいわゆる公共交通機関(電車、飛行機、車など)とします。交通手段はその場所に行ける最も早いものとし、自家用ジェットなど一般的でない移動方法は除くものとします。範囲は本州、北海道、四国、九州とし、北方領土などの離島は除くものとします。出発地点は日本橋とします。
検証
候補地の選定
日本橋を出発点とし、公共交通機関を乗り継いで到達するまでに最も時間を要する場所を割り出していきます。
「遠い」と錯覚しやすい北海道や九州の極地は、近くに空港があるため羽田からのフライトと二次交通を組み合わせることで、実は3〜5時間程度で着いてしまいます。狙い目は、新幹線駅や空港のいずれからも著しく隔離されており、かつ高速道路網からも外れた山間部や陸の孤島です。
この条件で探すと、四国最南端の足摺岬や本州最北端の大間崎、日本一広い村である奈良県の十津川村、さらには北海道の知床や長野の秋山郷といった秘境エリアが浮上してきます。
東北・北海道・信州エリアの到達時間
まず大間崎に関しては、東京駅から東北新幹線で新青森へ向かい、青い森鉄道とJR大湊線、そして路線バスを乗り継ぐルートを辿りますが、青森空港からレンタカーやバスを使うルートも含めて検討すると5〜6時間程度で到達できてしまいます。
次に北海道の最果てとして名高い知床半島の知床五湖ですが、羽田空港から女満別空港へ飛んで網走経由でJR釧網本線の知床斜里駅へ向かい、そこからウトロ温泉経由の路線バスに揺られても約5時間45分で着いてしまいます。女満別へのフライト自体が1時間45分程度と非常にスピーディーなため、空港からのバスアクセスが整備されている道東エリアは、距離の割に時間的には近い場所となってしまうのです。
意外な健闘を見せるのが、長野と新潟の県境に位置する信州屈指の秘境・秋山郷の最奥部にある切明温泉です。東京駅から北陸新幹線で飯山駅へ移動し、JR飯山線に乗り換えて森宮野原駅からローカルバスを乗り継ぐことになります。東京からの直線距離は200km程度しかないにもかかわらず、新幹線を降りてからのバス本数が極端に少なく山道を迂回するため、約6時間10分を要するという逆転現象が発生します。
西日本勢が見せる怒涛の遠さ
しかし、これらを遥かに凌駕するのが紀伊半島の山奥と四国の西南端です。
奈良県の十津川村へは、新幹線で新大阪や京都へ移動したのち、日本一走行距離が長いことで知られる八木新宮特急バスなどに乗り換えることになります。吉野の山々を愚直に突き進む路線バスに数時間揺られ続けるハメになるため、乗り継ぎなしのストレートな移動でも約6時間40分かかります。
さらにこれを上回るのが、四国の西南端に位置する高知県大月町の柏島周辺です(橋で繋がっているため本土扱い)。羽田から高知龍馬空港へ飛び、空港連絡バスで高知駅へ向かった後、土佐くろしお鉄道の特急あしずりで終点の宿毛駅まで揺られ、そこから路線バスで山と海沿いを延々と進みます。乗り継ぎの待ち時間を完璧に排除した最短ルートを組んだとしても、なんと約7時間15分という圧倒的な時間を叩き出します。
結論
最も遠い場所とその理由
東京・日本橋から公共交通機関で最も時間がかかる場所は、四国の西南端(高知県大月町周辺)、あるいは紀伊半島の中央部(奈良県十津川村)という結果になりました。
北海道や東北の端よりも四国の端や紀伊半島の山奥が遠くなる理由は、空港や新幹線駅からの「二次交通」の弱さにあります。地方空港が整備された北の大地へはフライトで一気にワープできますが、高速道路や特急の網から外れた地域では、最後の十数キロから数十キロを時速30km程度の路線バスに頼るしかありません。
まとめ
物理的な「距離の遠さ」と、交通網がもたらす「時間の遠さ」は全く別物であるという、日本の交通インフラの面白い歪みが露わになる結果となりました。